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『interlude』【静寂】



 教会の裏で月明かりの下、大小二つの黒い影が奔る。
 老魔術師は焦っていた。
 神父によって桜の刻印虫の大半が祓われてしまった。
 中枢に食い込んだモノは取り除かれなかったので、時間さえあれば元に戻る。
 それ自体は問題ではない。
 問題はそれによって臓硯は桜に対して、殆ど干渉出来ない状態に陥ってしまったことだ。
 臓硯が桜の支配力を取り戻すには、至近距離まで桜に近づかなければならない。
 しかも、遠坂の娘が念の入ったことに結界まで張ってしまったので、今桜がどのような状態か判らなくなっている。
 ことは、一刻を争う。
 本来、前線に出てくるはずのない臓硯がこうして自らサーヴァントを連れて教会に侵入しようとしているのはこんな理由のためだった。

「━━━━━ム。」
 アサシンが立ち止まる。
 前方になにかいるようだ。

「こんな夜更けになんの用かな間桐臓硯?
 それに、教会には入り口から入ってきてもらいたいのだが」
 アサシン以上に闇が相応しい神父が、そこに悠然と立っている。
 まるで、ここにいるのは散歩をしていて偶然出会ったような雰囲気だ。

「懺悔なら、昼間に来て欲しいものだ。
 いや、失敬。
 間桐臓硯は昼日中は歩けぬ身体であったか」
「綺礼、今貴様とじゃれ合っている暇はない。
 命が惜しければそこを除け。
 貴様一人でサーヴァントを相手に出来るはずもなかろう?」
 老人は苛立ちげに神父に言い放つ。
 いつもの余裕などまるでなく、焦りを隠そうともしない。

「そうともいいきれまい。
 私はこれでも『代行者(エクスキューター)』だ。
 この世にさまよう悪霊を浄化させるのは専門分野でもある」
「愚かな、人の身でサーヴァントに挑もうとするなど狂気の沙汰。
 アサシン、その愚者に分からせてやれ」
 瞬間、影と影が消えた。

 アサシンの武装は投擲用の短剣(ダーク)
 特になんの細工も施されていないものである。
 対して神父の武装は黒鍵と呼ばれる両刃直刀の剣であるが、物理的な攻撃力はそれほど無い。
 これは悪魔払いの護符の一つであり、魔力で編まれた刀身がこの世ならざるモノに致命的な打撃を与える。
 神父はそれを左右に五つずつ持っていた。
 下級霊ならば一撃で消滅させるほどの威力をもつそれはアサシンにとっては力不足。
 そもそもアサシンに命中させることすら至難の業である。
 神父はまるで勝ち目のない戦いをわざわざ挑んでいた。

「━━━━━━━━━━」
「━━━━━━━━━━」
 闇から闇へ、影から影へ音もなく殺気もなく移動してゆく。
 あるのはお互いの武器が激突する閃光と音のみ。
 アサシンの短剣は閃光のごときスピードで投擲されてゆく。
 神父の黒鍵は攻撃のためというより、その防御のために使われていた。
 それだけアサシンの攻撃は苛烈であり、隙がなかった。
 しかも、アサシンにはまだ必殺の“奥の手”がある。

 無数の閃光が走る。
 その数、すでに三十を超える。
 何処に隠し持っているのか、アサシンは途切れることなく短剣(ダーク)を神父に投擲していた。
 その攻撃は全て必殺の威力を持つ恐るべきもの。
 それを神父は弾き、躱す。

『interlude out』


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